もりや人vol.5

守谷市板戸井にある「ジーバナ農園」。
守谷で有機無農薬の野菜作りを実践する飯田智弘さんの農園です。

飯田智弘さんと奥さまの朋美さん
野菜作りだけでなくその食べ方もお話してくれて、想いが詰まった野菜を頂く幸せを実感できた。
ジーバナ農園ブログ:http://jivana.exblog.jp/


〈植物-土-虫-気候 全てがつながる野菜づくり〉
「ジーバナ」とはサンスクリット語で「生命や生活が永らえる」という意味。その名の通り、飯田さんはここで持続可能な野菜づくりに取り組んでいます。
彼が手がける野菜づくりは、その土地にあるもの、そこで手に入るものを使うことが基本。堆肥にも、自宅の裏にある雑木林で育まれた土着菌が使われています。ふかふかに積もり重なった林の落ち葉の下から掘り出した菌を米ぬかなどで培養し、土へと漉き込む。こうして育った野菜は、この土地ならではの自然のサイクルの中で、その恵みを育んでいます。
雑木林はきれいに手入れされている
林床の土着菌(枯葉の白い部分)

「植物だけじゃなくて、土の中の微生物や虫、石にふくまれたミネラルなど、この土地の全てのものが野菜をつくる上で大切なもの。だからなるべく生態系の多様性を大事にしたいと考えています。」(飯田さん)

〈出会いが導いてくれた、土地に生きるということ〉
家は祖父の代から農業を営む農家。しかし、彼は決してすんなりとここまでの道のりを歩んできたわけではありませんでした。農業は小さな頃からごく身近な存在だったけれど、むしろ将来の仕事として意識したことはなかったといいます。そんな彼の人生を変えた転機は、旅先での偶然の出会いにありました。青森県の六戸でハーブ農園を営む大西正雄さん。ヒッチハイクで旅をしていた時に声を掛けられたことが縁で、しばらく大西さんの農園でお世話になることになった飯田さんは、そこで自然とともに生きる大西さんの暮らし方を目の当たりにして、植物の中に備えられた生命力や、その恵みを受けながら人が生きるということの意味を深く考えるようになります。そして、それをきっかけに、野菜の多くがその原産地としている南米には何があるのか、それを自分の目で確かめるため、北から南まで13カ国もの国を旅しました。

「植物のもつ本来の力を最大限に生かした野菜づくりをやってみたい」。日本に帰ってきた飯田さんの心には、やりたい事がはっきりと見えてきました。けれどもまだ、どうすればいいかはわからない。そんな悩みを抱えていた飯田さんの背中を押したのは、つくば市で有機無農薬栽培に取り組む会田農園との出会いでした。つくばという、気候・風土も似た場所で、自分が思い描いていたような農業に取り組む人がいることに勇気づけられ、会田農園で学んだ飯田さんは、迷うことなく有機無農薬の農業へと打込み始めます。

今、取り組んでいるのは、できた作物の種をとって同じ場所で次の世代の作物をつくる「固定種」の栽培。自分もこの土地の循環の一部、だから自分にとって、野菜をつくるということと、この土地で暮らすこととは切り離すことのできない一つのことなのだ、と飯田さんは言います。だから土地の先人が残してくれた知恵はかけがえのない宝だとも。

種を採り育てた茄子
毎年選抜した実の種を採り
育てることによって、
その土地に根付く「固定種」が
確立されていく。
これも種を採り育てたズッキーニ
畝間にあるのは麦。
雑草を抑制するだけでなく、
根によって土を柔らかくする。
夏になると暑さで枯れる品種なので、
そのまま緑肥としてすき込む。

















作った野菜をただ売るだけでなく、農を通じて土地とともに暮らす生活の大切さや奥深さを伝えていきたい。そう話す飯田さんの笑顔を思い出すと、野菜もまた違ったものに見えてくるような気がします。  
(barista)