もりや人vol.1

守谷に住む(働く)気になるアノ人に会いに行こう!ってことで始まった「もりや人」です。

訪ねたのは、守谷で開業して20周年を迎えたパン屋さん「風見鶏」のご主人、八木下敦史さん。 昔から変わりなく続くハード系パンを中心としたお店の職人さんということで、少し気難しい方かな? なんてイメージを勝手に抱いていたのですが、大きな笑顔を浮かべる素敵な方でした! 風見鶏が開店した20年前といえば、守谷はまだまだのどかなもの。ふれあい道路なんか、車でも夜に通るのは少し怖かったりして。 そんな中、ふれあい道路から見える場所にオープンした「風見鶏」は街の香りを運んできてくれたな〜って思えたものでした。 当時は、ハード系のパンをお店で焼いて売っているパン屋さんなんて、珍しかったものですから。
〈パン屋への思い〉
八木下さんがパン職人の修行を積んだのは神戸。パン食文化が根付いた神戸では、パン屋さんがコミュニケーションの場となっていたそうです。
店を訪れた人が、お店の人と声を交わす中で、街の中のちょっとした情報に触れる。または情報を置いていく。それができるのは、ただパンを売るだけでない、ずっと変わらず暮らしの中に存在できるお店ならではでしょう。八木下さんは修行中の経験を通じて、自分もそのような文化の息吹を感じることのできる店を作りたいと考えるようになったのだそう。そしてその思いが今も変わることなく実現されていることは、「風見鶏」を訪れる人が何気ない言葉を交わしていくことに表れているように思います。

〈職人の姿からみえるもの〉
八木下さんは、パンを作る時に「伝統」を大切にしているそうです。
それは彼の修業時代のある経験から培われてきた感性のようです。
まだパン作りに関わる前に、フランスで修行してきた菓子職人の方のところで修行をしていた彼は、そこで出されたフランス伝統菓子を食べて「とても美味しい」と感じたそうです。それは本物の材料を使い、伝統の作り方で丁寧に作られたものでした。例えば、バタークリーム。当時、大手メーカーが量産するバタークリームケーキは、香りをつけたショートニングを材料として使うことが一般的で、本物のバターを材料として作られたクリームは、そんなものとは雲泥の差だったと言います。
以来、きちんとした材料で、伝統の製法にこだわる彼の姿勢が生まれました。
伝統の製法にこだわるのは、そこには長い間培われた知恵が存在するから。
八木下さんは、新しいものを作る時にも、伝統の製法を基本としているそうです。
そんな彼がインタビュー中、何度も口にしたのは、
「長年受け継がれてきた味を、一人の職人としてずっと作り続けたい」ということ。
それは、職人であることが自分を形成してきた、と感じているからだそう。
そんな思いに職人のこだわりをみた気がしたのですが、「こだわりって売り手側から主張するものではなくって、周囲から自ずと見えてくるものだと思うんだよね。」と言う八木下さん。そういう姿勢にこそ、ゆるぎのない「こだわり」が詰まっているんですね。
こんな思いを持つ人が、店で待つパン屋さんがこの街にあるのって、とっても嬉しい。
これからも幸せなパンを作り続けて欲しいと思うのでした。         (chai)