もりや人vol.3

約1200年も前から守谷を見守る総鎮守、八坂神社。毎年7月最終土曜日に行われる祇園祭(ぎおんさい)にはお出かけの人も多いでしょう。しかし、神社の神主さんは我々にとって少し遠くて謎多き存在ですよね。今回の「もりや人」は、八坂神社の宮司、下村良弘さんです。


〈「宮司」という仕事〉
宮司さんて、どんなお仕事されているのでしょうか。
下村さんによれば「神様と人間の間をつなぐ『仲とりもち』として、皆様のお願い事を祝詞として奏上し、神様にお伝えするいわば通訳のようなもの」とのこと。宮司さんの言葉を難しく感じていましたが、私たちの言葉を神様の言葉に置き換えているのだと思うと親近感が湧きますね。
その他八坂神社では、境内の掃除から社務所でのお札やお守りの授与、氏子さんに配る正月飾りの準備、神社のホームページ製作・更新なども、全て下村さんのお仕事。
なかでもお守りは、とてもきれいでデザインもユニーク。「なるべくここにしかないものをと思い、守谷小学校の校歌にも登場する神社の銀杏や守谷市の木である松などを取り込んでいるんですよ。」との思いから、下村さんが自ら指示を出し、ていねいにデザインされたものなのです。

〈WEBデザイナーからの転身〉
下村さんが神主の世界へと入ったのは、今から9年前のこと。きっかけは、八坂神社の宮司をされていた方が、後継者を探されているという話を聞いたことでした。「八坂神社は、お参りや遊び場、お祭りなど、子どもの頃から常に私の人生に自然なかたちで係わり続けた存在でした。それに八坂神社にはもう永らく常勤の宮司の方がいなくて、当時も取手市にある神社の宮司さんが八坂の宮司を兼務されていました。八坂神社を盛り立てる力になりたい、という思いがありましたね。」
当時下村さんはホームページなどを作成するWEBデザイナー。神社とはかけ離れた職業に思えるのですが、ご本人はさほど気にしていない様子。それよりも気持ちが先に動いた、ということなのでしょうか。神主として知識や資格を得る為に、会社を辞め学校へ通い、礼儀作法や、古文、国学、法律などいろんなことを学んだそうです。

〈神社は地域にとって空気のような存在〉
神社というのは本来、地域にとって切ってもきれない存在だと下村さんはいいます。「日本の神は西洋の神とは全く違い、自然そのもの。我々を生かしている自然の恵み一つ一つに神様が宿っていると私たちの祖先は考えてきました。だから一年の間の節目、人生の中の節目の一つ一つで感謝の念を示すことが、『祀り(祭り)』なんです。村が一つあれば、そこには神社が一つあり、地域の共同体と深いかかわりをもってきました。地域の人々が願いを込めて力をあわせて一つのことをする、神社にかかわる年中行事や人生儀礼を通して、子どもも大人も協力することやお互いを理解すること、協調することなど、多くのことを学んでいたのです。」
今、守谷で9つの神社(宗教法人)の宮司をしている下村さん。宮司としていろんな地域に係わる中で考えるのは、神社をもっと、地域を元気にし、地域の人々の成長や安らぎを与えるような場として活かしていくこと。八坂の宮司さんは、穏やかな人柄の中に守谷への温かい想いを感じる、素敵な方でした。  (barista)